チャイナタウン。その響きがもつ何か混沌とした怖さ。そう思ってしまうのは、最近、中国が対日感情を悪化させているように思えるからだ。
自分を嫌う者を好きになんかなれるワケがない。だから、自分の体の中でも対中感情の悪さが確実に転移していくのがわかった。
しかし、こういう貧困な想像力から生まれる被害妄想が、争いごとの発端になっていくのだが・・・
自分はチャイナタウンに行くの初めてではない。カナダやインドでチャイナタウンに行ったことがあり、「口に合う食べ物や、冷たいウーロン茶が手に入る便利な所」とむしろ好意的に思っていた。
インド以来10年ぶりのアジア。久しぶりというのもあって緊張していたのかもしれない。自分はそういう感情を内在しつつトゥクトゥク(後ろに客を乗せる三輪バイク)でバンコクのチャイナタウンに向かった。
かなり混沌としている。
熱気、ニオイ、継ぎはぎして背が高くなったようなマンション・・・ここは正真正銘チャイナタウンだ。経験があるとはいえ、改めて圧倒された。
寝床にしているカオサンと違うのは、ファラン(タイ人は白人をこう呼ぶ)がいない、物売りが声をかけてこないということ。これが意味するところは、「ここは観光客の来るトコじゃないですよ」ということなのだ。
うぅむ、、しかしビビってる場合じゃないぞ。やってみるまでわからないじゃないか。ここは被写体としては面白すぎるところだから、写真をとにかく撮ろうということで、臆面も無く景色や人々の表情をパチパチ撮りはじめる。
「何よ、仕事急がしいんだから」という顔をする人もいるが、こちらが手を合わせてお礼を言うと、もれなくみんな笑顔で手を合わせてくれる。
こういう笑顔が積み重なってくると、徐々に写真を撮るのが楽しくなってくる。
良く考えたら、昼間だし、異質な人間(老若男女、多国籍な人々)が集まっている場所なんだから、ビビることなんかちっともないじゃないか。
すっかり慣れて、街の奥の奥まで歩いた。ガイドブックに載っているスポットなんかより、よっぽど非日常な場所で、刺激的だ。
そうこうしているうちに腹が減ってきた。しかし、チャイナタウンでもかなり辺鄙なところに来てしまったので、なかなか食べるところがなかった。
やっとみつけた屋台で、子供が食っているヤツを指差して作ってもらった。汚ねぇ油で炒めんなよぉと思いつつも、食べてみると意外にうまかった。
「good taste」を連発していると、今度はどこからともなくデザートを俺のために運んでくる娘がいる。
しかしどれもドキツイ色(黒やピンクのデザートが6種類くらい)なので、俺がいぶかしげにそれぞれに鼻を近づけていると、周りが爆笑し、それに釣られてギャラリーが集まってくる。観光客なんて珍しくもないはずのバンコクなのに、こんなところでは意外にそうじゃないのかもしれない。
そして、唯一まともな色をしていたものを選ぶと、それはなんと「ドリアン」だったのだ。こ、これが臭さ世界一、酒と一緒に食すと死ぬこともあるというドリアンか!
一瞬、後ずさりするものの、デザートになっているので、臭いは耐えられる。食べてみた。
うまい。食べられる味だ。しかし、ゴムの腐ったような風味は口中に篭もった。
この自分のリアクションの一部始終を見て、さっきより多くなっているギャラリーが大笑いしている。多分オレは「こ、これが噂のドリアンかよ・・・」と思い、かなりの真顔だったはずだ。
こんな出来事を経て、自分はこの雰囲気が好きになってしまった。観光客ばかりを相手にして、スレてしまった所とは違う、本来の素朴な姿が見れたんじゃないか?と思った。
チャイナタウン。自分はまた違う国でそこに訪れ、写真を撮るだろう。
【写真】テーブルなどの足につけるゴムだけを売るオバチャン。これが精いっぱいの笑顔なのかも。
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