アジア旅行記 【2】 2003年8〜9月
シェムリアップで喜び組と・・・(シェムリアップ)
 タケオゲストハウスは、隣にもチェンラゲストハウスという日本人宿があるので、「今晩ちょっといいもの食いに行こうぜ〜」といえば、簡単に5、6人は集まる。

 そして今夜、自分が言いだしっぺで3人くらいに声をかけたら、結果的に男7人・女2人になっていた。

 当然、カンボジア料理を食いにいくものと思っていたのに、誰かが勝手に?適当なところにバイタクを誘導したため、なぜか韓国料理屋に着く。カンボジア料理をと思っていた自分は「韓国料理なんて日本でも食えるやん」と愚痴っていた。

 が、店に入ると雰囲気が異様なことにすぐ気づく、チマチョゴリを着た若い女性が礼を尽くして扉を開き、われわれを殿様のように迎えたのだ。

 そして、胸についた北朝鮮の国旗をデザインしたバッヂ・・・う〜む、ここは韓国系ではなく、北朝鮮系の店なのか?韓国人が北朝鮮を模したバッヂなんてつけないよな??

 そしてオレたちの仲間の一人が女性に質問すると、北朝鮮からきていること、そして3年間の期限つきでこのシェムリアップで働いていること、などがわかった。


「偉大なる将軍様・・」を連想する、抑揚の強い独特の歌い方だった・・・

 それがわかると皆口々に「拉致される」「こんな大勢いたら無理やろ」などと、冗談半分に発していた。

 しかし、ここの雰囲気はヤバいものではない。韓国人の団体旅行客が大勢いるし、さっきからカラオケで盛り上がっている。そして、この北朝鮮女性も「将軍様、将軍様」って感じでもなく、異国の客の接待に慣れているようだった。表情も「イっちゃってる」感じではなかった。

 北朝鮮話で盛り上がっている中、自分は「ここでカラオケを歌わねば」と何か使命感に勝手に燃えていた。

 そしてダメモトで「日本の歌はありますか?」と聞くと、あるという。渡された曲目リストを見ると、約10年前で時がとまっているものの(ジッタリンジンなどがあった)、思ったより曲数があった。

 自分が選ぶは18番「襟裳岬」。

 韓国の団体観光客からも拍手を受ける中、僕は目いっぱい楽しんで歌った。オレたちが既に「喜び組」と呼んでいたチマチョゴリ女性たちもみんな視線をこちらに向けて手拍子をしてくれている。


 そして今度は、韓国人団体客が喜び組とデュエットをしているのを見て、「オレもやろう」と思い、たずねてみると、日本語の曲を歌える女性がいるという。どぉ〜っ、マジかよ〜!

 と思い、その女性に聞いてみると、谷村真司の「昴」が歌えるという。歌ったことのない曲だったが、こんな機会はないと思い、お願いした。

 みんなの「拉致されるぞ〜」「将軍様の女に手を出すか〜」というヤジにもめげず、自分はマイクを握り、「アニョハセヨ」と挨拶した。

 曲が始まると、自分は詰まってしまったが、喜び組は正確に歌っている。しかも、よくテレビで目にする仰々しい抑揚をつけた歌いかたをする。それを聞いて「きた〜っ、ここは北朝鮮だ〜」と実感を強くした。


デュエットに挑戦するオレ

 ちょっと酒も入っていて、あんまり覚えていないが、曲が終わった後自分は思わず深々とお辞儀をしていたように思う。

 こんな店、日本じゃありえないだろう。しかし、北朝鮮は日本人ではあまり知られていない国に進出しているんだなぁということを実感した。東南アジアではベトナム、ラオスは北朝鮮に寛容らしいが、カンボジアもそのようだ。

 歌い終わった後、「一緒に歌った北朝鮮女性もいずれは北朝鮮に戻るんだなぁ」と考えたら、何か可哀相というか、こういう自由や俗世間も知りながらも、あのような国に戻って気持ちが押さえられるものなのかな?というようなことを、当然ながら考えた。
 場は盛り上がっていたが、彼女たちを見て、「かわいそうだなぁ」と、皆思ったに違いない。

 シェムリアップで北朝鮮・・・後から聞けば、この店は隠れシェムリアップ名物として有名らしい。とても不思議な体験をした。


一緒に店にいった9人

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