寺のススメ
99年3月
僕は今から1年くらい前、仕事の都合で何の縁もない奈良にやって来た。
知り合いも何もないので、たまにある休みの日をどう過ごそうかと考えた時、「寺」を思いついた。せっかく奈良に来たのだから・・・
そして、家から車で5分の所にあった唐招提寺に行ってみた。
平日の誰もいない寺・・
そこで衝撃を受けた
なんだろう・・・この緊張感
重厚感のある建物が密集する、この独特の空気感……静けさ……ここには境内の外の日常からは隔絶された異空間があると思った。
「寺」と聞いて自分が今までイメージしていた、ジジババくさいというようなことは全く感じなかった。
ここで起きた歴史を深く知り、「この空気の意味を知りたい」という欲求にかられた。
それ以来、僕は奈良時代に関係する本や図録を買い漁り、読んだ。
僕は昔から歴史・地理の社会科系だけは好きで、テストなんか勉強しなくてもできた。
しかし僕の育った千葉県は歴史の遺物というものが、からっきしない。
由緒ある建物を見たのは、学校の修学旅行程度しかない。
しかし今、唐招提寺の金堂を前にして、歴史観というものが自分の中で変わった気がした。
今まで歴史が好きだったのは、暗記してそれに答える「クイズ的」なところが、ただ面白かっただけなのかもしれない。
こんなことがあって以来、休日の度に足繁く色々な寺を車でまわった。
寺はゲームソフトで車はそれを動かす本体で・・という感覚で。
平日の誰もいない静かな寺
お堂の門帳が揺らめき・・
塔の風鐸が音を奏で・・
木漏れ日が揺らめき・・
鳥が鳴く・・
動くことのない建造物の中でこういう「動き」があると、なんか歴史が動いたような気がしてきてゾクゾクする。
平日の誰もいない日や、ちょっと肌寒い日だと、緊張感が増して、それがさらに際立つ。
奈良に住んでいる人で、いつでも行ける寺に興味を持っている人は自分が思っていたより少ない。
でも、入場料なしで入れる興福寺の境内や、古墳の池のほとりで、日向ぼっこをする老人や制服姿で話し込む高校生の男女の姿はよく見かける。
敢えてその場所を選んでいるわけではないと思うが、憩う場所に素晴らしい塔やお堂が建っている、その光景がなんだか羨ましく思えた。
奈良に来て1年、ひと通りの季節を体験した。
寺は梅雨の時期と秋がいい。
梅雨・・・
木々や苔が瑞々しさを湛え、深い緑が目に染みる。
堂塔の柱は雨に濡れ、さらに重みを増す。
秋・・・
冷たい風が郷愁を誘い、色とりどりの木々と古色の堂塔が絶景を作り出す。
奈良の風景・・
和の風景・・
結構いいと思います。
ぜひ、このホームページで散歩してみてください。