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えー、「すべてがFになる」「冷たい密室と博士達」につづく、N大助教授犀川シリーズの3作目です。 実はこのシリーズ、もう5作目まで刊行されてるんですね。最新刊は「封印再度」(“WHO INSIDE”というサブタイトルがついている。このセンスは好きよ)。にしたには、最初の「すべてが〜」がいまいちピンと来なかったため、このシリーズ長らく無視してたんです。ところが、こないだ本屋に行ったらふと「冷たい〜」が目に付いた。その時は珍しく経済的に余裕があったので、久しぶりに文庫版より大きいサイズの本を買ってしまったのでした。 で、これがまあまあだったんで続編も読んでみた、と。 はっきり言いましょう。 とってもフェアだがワンダーが無い。 特に本作「笑わない数学者」は、エラリィ・クィーンと島田荘司の方法論さえ使えば、事件が起こる前に(笑)答えが出てしまいます。決して、自慢してる訳じゃありません。確かににしたには“自慢しぃ”ですが、このナゾはホントの話とってもカンタン。なぜ、あんなに賢い西之園萌絵(シリーズのヒロイン格)が気づかないんだろう?ってなもんです。 何故カンタンかといえば、これはもう作者がフェアだから。どう考えてもこの結論しかありえない!という伏線を用意して、確実な解答まで持っていってる。下らないケレンも、謎解きの興を殺ぐ血縁/人間関係もほとんど無し。 なにせ、探偵役である犀川助教授が、「理論的に、犯人は○○しかありえない」と言った後で「ところで、動機は何ですか?」と聞いちゃうんだからスゴイ。純粋理論上の推理とか呼ぶらしいけどね、このスタイルのことを。 ちゃんと考えれば確実に解ける問題。ヒントもきちんとちりばめられてる。だから、終局を迎えるに当たっての読者の感慨は、ちょっと自信のある算数の文章題をセンセイに見せる時の感じとごく近い筈。「どうだっ!あってるだろ?」ってなものです。んで、ちゃーんと丸貰ってニコニコ、ってな感じ。 それはそれで、パズルゲームもしくはクイズの類として確かに楽しいんだけど、 「えっ!あ!そうか!そうだったんだ!」 というワンダーが・びっくりが・ときめきが無いんだなぁ。さぁ真実は、という時の高揚感も乏しければ、「やられた!」という心楽しい裏切りも無い。そりゃあまあ、「おーしおーし」ってのは有るんだけどね。比較しちゃうと、やっぱり「しまった!そう来たか!」の方が「ふっふっふ、そうだろうそうだろう」よりテンション上がりますからねぇ。 正直に言うと、「冷たい密室〜」できっちり犯人がわかったにしたに、味をしめて「笑わない〜」を買ったんです。 つまり、「この作家はフェアプレーで来るから、ちゃんと考えればあの勝利の快感をもう一度味わえるに違いない」と思ったんですよ。 そういった意味では、確かに裏切られること無く理数的論理ゲームを堪能させて頂きました。推理小説としては、限りなく『ちゃんとして』います。でも、次作は当分買わない。もう飽きた。紹介文見たら、同じパターンみたいだし。 そりゃあ、手を変え品を変えて訳の分からん「自称」ミステリを排出しつづける作家よりは、はるかに良心的だとは思います。 ただ、何冊も続けて読む気はしないし、新作を楽しみにするって程でも無いなぁ。 ううん、そう、短編集なら買う!多分買う。特に、長旅のお供によさそうだわ。良くあるでしょ、『頭の体操』みたいな奴。あれの上質版として入手する。 そうそう、最後にはっきり言っておきますが。 文はかなりいい線行ってます。 キャラクターも立ってるし、押し付けがましくないところが好感度大。「すべてが〜」ではこなれきれていなかった部分も、「冷たい密室〜」でグン、と良くなりました。決して、読みにくくも一人よがりでもありません。あくまで、ちゃんとした「文筆家」の文章ですよー。理系人間の余技ではありませんので、これから読む方はご安心を。 『人物が描き切れていない』といった某評論家さん、アナタ本当にこの本読んだの? |