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もっと気になる「モーニング娘。」

2000年9月某日。
『ASAYAN』を見ていたら、モーニング娘。のスタジオライブなるものが行なわれていた。いわゆる、“新曲発表会”とでも言うべきものらしい。
その曲・『I Wish』を一通り視聴したワタシは、愕然とした。安倍なつみの姿が、ほとんど見えないのだ。あれだけ長期にわたってセンターを守り続けて来た安倍が、ついに“その他大勢”扱いとなってしまったのである。いや、ソロどころかツインボーカルすら1箇所も無く、おそらくメンバー10人中最もテレビに移り辛いポジションに追いやられてしまっていたのだ。

実は、何時の間にか我が家に、『映像ザ・モーニング娘。ベスト10』なるDVDソフトが生えていたんである。生えてしまったものは仕方が無いので今週末つれづれに眺めていたのだが、ここまでの10曲を並列的に鑑賞すると、やはり“後藤以降”のモーニング娘。の変質はあまりにも急激で、フォローアップし辛い。

元々、メジャーデビュー以降しばらくのモーニング娘。の楽曲は、完全に“女性版シャ乱Q”とでも言うべきマイナー歌謡スタイルだった。
ルックスよりはボーカル・明るさよりは情感、という方向性は、「5万枚売れたらデビュー」等と言ういかにもテレビ的に行き当たりばったりな企画に乗せられて、彼女たちをデビューさせ“なければならなくなった”つんくが持ち出した、最大の戦略だった筈だ。平家みちよの二軍として寄せ集められた彼女たちは、ルックスもそこそこ歌もそこそこラインの集合体。これをこのまま既成の“アイドル”のフォーマットに載せて、明るく爽やかでそのかわり大した歌唱はしない・・・という方向性にするのならば、それはあくまで“おニャン子”が先鞭を付けた女性グループ形態の焼き直しに過ぎなくなる。それを、敢えて“歌は単調”“明るく可愛く”という逆を狙い、哀感漂うベタな歌謡曲を、しかもフルハモで(ワタシがモーニング娘。を強く認識したのは、“ミュージックステーション”で『サマーナイトタウン』を初めて聞いた時である。オンナノコアイドルグループが立派に生でハモっているのを見た時には真剣に驚いた)勝負したあたりが、つんくの最大の腕の見せ所だったに違いない。
そして、この戦略を支えたのが、安倍なつみ(と福田明日香)の声だったのである。

単なる歌唱力で行けば、もしかすると安倍よりは保田の方が巧いかも知れない。しかし、安倍(と福田)の声質には、独特の情感とドラマ性がある。“含み”と“揺れ”という2大ニュアンスを兼ね備えた安倍の声質は、ただ巧いというだけでない“背景”を歌の奥に現出させる。この声質故、安倍の魅力は、演歌すれすれの情感こもった楽曲において最も良く発揮されるのである(『抱いて HOLD ON ME!』のなっちなんて、んもうタマランっすよ、ダンナ)。

しかし、この戦略は、福田脱退により転回を余儀なくされる。
“マイナー”を“ハモる”という2段構えの方策は、いわば、安倍と福田の声がクロスするその重層性によって支えられていたのだ。それが、一方の輪である福田を失い、その後しばらくモーニング娘。は楽曲的に迷走する(『真夏の光線』『ふるさと』)。そして、ついに梃入れの増員が決定される訳である。

「99.9.9に9人で再スタート」
という洒落もあったとは言え、本来、2名分枠が取られていたこの増員は、“ポスト福田”として安倍の正対角位置を支えられるだけのキャラクターが望まれていたのではないかと思う(新人がピンで安倍に立ち向かうことの難しさも含めての2名枠か?)。しかし、結果としてここで入ってきたのが、後藤真希であった。
後藤は、確かに安倍の正対角を担えるだけのキャラクター性を持っていたものの、如何せん声質がこれまでのモーニング娘。の傾向と全く違う。明るく平板で少し頼り無いその発声は、まさに旧態依然たる“アイドル”のフォーマットにおけるそれである。
ところが後藤は、この異質性によってグループ内から弾かれるどころか、(もちろん、「2人枠を1人で独占!」という話題性や、新奇な方に流れやすい衆目の後押しというゲタを履いた状態ではあるが)たった一人で(正確に言えば、矢口真里のキャラクターは比較的後藤に近い路線だが、彼女には後藤ほどのパワーは無かった)“モーニング娘。的”な骨組みを解体し、このグループを“正統派アイドルグループ”というフィールドへと引きずり込んで行ったのだ。直近の増員組4人を見てみれば、“後藤的アイドルカラー : 旧モー娘。カラー”のバランスを多少なりと拮抗させるための(つまりは、ムード歌謡をバリハモで聴かせていたオリジナルの“モー娘。”カラーを希釈するための)要員であることがすぐに判る。今回の増員が過去最大の4人となったのも、その為であろう。

しかし、コーラスワークも無ければ哀感も漂わせない“モーニング娘。”は、もはや、“おニャン子”が先鞭を付けた女性グループ形態の焼き直しに過ぎない。
平均よりはちょっとばかり上、という感じの少女たちが、泣きそうな顔をしてベタな歌謡曲を囁く・・・という特異性。ただ頭数を揃えるのではなく、それなりに立体感のある和音を響かせる意外性。この、初期のモーニング娘。のアイデンティティとさえ言える特質を支えていた安倍の、急激にしてあまりにも悲惨な凋落は、ダンス・口パク・明るく可愛く低年齢という“後藤的資質”が今のモーニング娘。の中核となっていることの証左でもある。

ベスト盤でまとめて一気に見るとよく判るのだが、『LOVEマシーン』は、“旧モー娘。的”なものと“後藤真希的”なものとが絶妙のバランスを取っている、いわば奇跡的均衡の上に成り立った楽曲であった。おとっつぁんおっかさんも唄えるカラオケ歌謡的側面と、アイドルとしての少女たちのオーラが、珍妙なダンスの上で完全に融合しているのである。しかし、“後藤的”資質という基準によって加入した4人の為に、バランスは完全に崩壊した。“旧モー娘。的資質”は今や駆逐されつつあり、その状況を体現しているのが安倍なつみ、という訳である。

その歌謡曲っぷり故に、
「モーニング娘。ならなんとかついて行けそうだ」
と感じていた“ちょい上”世代(アイドルに騒ぐほどじゃないけど、とりあえずカラオケでヒット曲は歌いたい)がモーニング娘。について行けなくなる時は近いだろう。しかし、『モーニング娘。よりも更にオトナで更に歌謡曲』であった筈の“タンポポ”ですら、“うしろ指さされ組”的転回を果たしてしまった。更に言えば、“若手女性ムード歌謡”というジャンルにおいては、小柳ゆきという爆弾的新鋭が台頭している。“モーニング娘。”、引き返す道は無い。後は、どれだけ後藤真希を消費できるかにのみ命運はかかっているのかも知れない。

『I Wish』は我慢するにしても、次の曲で“歌謡系”への復帰傾向が見えなければ、ワタクシ娘。とはすっぱり縁を切りますわ<大体、どんな縁があったというんだ、どんな縁が。



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