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とにかくもう、えたす(e+)とはとことん相性の悪い私。何としてでも欲しいチケットは全然取れないのに、 「あ、こんなのもあるんだー、ダメモトで一応申し込みだけしておこうかな」 程度のチケットは何故か「ご用意できました」と。で、もの凄く観に行きたかった訳では無いんだけどなぁ・・・としぶしぶ入金すれば、返送されてくるチケットの席は大抵が後ろから2列目だの最後列だのという悲惨さでございまして。全く、何て間が悪いったらえたす。 ま、そういった訳で、実はチケット入手段階から微妙に盛り下がっていた今回の観劇。パルコ劇場プロデュース・『おやすみの前に』、出演は宮本信子・川原亜矢子(初舞台)等々。 しなければならないことが山積みになっているというのに、何が哀しくて大枚7500円もはたいて日曜の夜にこの芝居を・・・と、チケットが届いてから約一ヶ月間、ひたすらオノレに問いかけつつ過ごした訳ですが。期待しないでしぶしぶ観に行ったら、やっぱりそれなりのお芝居でございました。しゅーん・・・。 脚本、福島三郎。最近テレビの方でも良く見かける名前ですが、三谷幸喜んトコでしばらくやってた後に“泪目銀座”なるユニットなどを立ち上げたりしてご活躍中の脚本家でございます。しかし、師匠筋の三谷幸喜と違って、全体的にちょっとユル目のプロットとご都合主義な話の流し方が微妙に気に障るというか。 今回のプロットは、ギョエテの『ファウスト』なんですが(っていうか、どちらかといえば手塚治虫が翻案した方の『ファウスト』に近い)。魔女と人間との交感だの悪い魔女と悪くない魔女との対立だの、今時そんな甘々しくも説教臭い話を・・・と溜息の出るような展開。特に、“悪い上級魔女”の心の鎧が剥がれかける瞬間の台詞なんぞは、あまりのお手盛りっぷりに椅子からずり落ちそうになったことでございました。 ストーリー。 ユキコ(宮本信子)とハナヨ(宮地雅子)は、表向きは保険会社のセールスレディだが、実は下級魔女。死にかけている人間と契約を交わしてポイントを稼ぐのだが、成績はイマイチ芳しくない。 ある日ユキコは、生命保険の顧客である若田部(うっちー岡田義徳)の上司・羽生教授(佐々木蔵乃介)が青く光る(=死期が近い)のを見てしまう。魔女として教授と契約を交わそうとするユキコに、彼は“今生の願い”を告げる。 「30歳の壮年に戻り、アカリ(川原亜矢子)と恋がしてみたい」 以下ネタバレ。 実は羽生教授は、不老不死の研究で名を馳せるバイテクの権威。もし彼の死を見届けて契約成立させれば、魔女にとってはかなりのポイントとなる。しかし、彼の願いが成就しなかった暁には、魔女であるユキコは罰を受ける事に。下手をすれば昆布に転生させられてしまうかも・・・という不安の中、ユキコは若返った羽生の恋を応援する事に。ハナヨと、ハナヨの契約者で死に切れず現世をウロウロしている幽霊・坂東(二瓶鮫一)も、ユキコのサポートに回る事となった。 はじめは若田部といい雰囲気だったアカリだが、何故か急転直下 「宗介さん(=羽生)が好き」 と。願いかなってみなハッピーになるかと思いきや、実はアカリが上級魔女で、高いポイントを持つ羽生の魂をユキコから横取りしようとしていたことが判明する。いざや契約成立の口づけを、という直前になって、しかし羽生は身を翻すのだった。 「アカリさんに恋したのは間違いない。しかし、30歳に戻りたかったのは、その頃愛したカフェの女給を忘れがたかったからだ。そして、ユキコさんはその女性と同じ匂いがする・・・」 と。 それもその筈、時空を超える魔女であるユキコは、これまでも幾たびも転生の中で羽生に出会い、密かに羽生に心惹かれつつ時を過ごしていたのだった。 しかし、魔女が人間に恋すれば、魔女としての力は全て剥奪されてしまう。思いを殺して羽生の願いをかなえるべく努力してきたユキコだが、羽生の告白に思わず泪を。そして、上級魔女アカリをしりぞけた2人は、次に転生するまでの“長い眠り”の前に、流れる星の下で、そっとくちづけをするのだった。そう、「おやすみの前に」。 ・・・陳腐だー、泣きたくなるほど陳腐だー。 特に、悪い上級魔女アカリの“運命の人間”(幾度転生してもあらわれる魂の相手)が実は若田部でした、なんてトコはもう、苛々を通り越して呆然だー。 『彦馬が行く』『お正月』と、このテの1セット舞台変え無しウェルメイド系芝居ではここしばらくハズれを掴まされていなかったせいで、ひときわ哀しみが増してまいります。今時深夜ドラマでもこんなチープな展開は無いだろう、と。 また、宮本信子の芝居がどうにもチープでチープで。 気弱であまり能力の高くないオバサン魔女、という役どころなんですが。あまりにも役作りしすぎた結果なのか、しんねりし過ぎててさっぱり魅力的ではございません。腰をかがめていつも半分泣いているような声で喋るうじうじ魔女、どうも見てると苛々してきちゃってなぁ・・・主役としての吸引力があまりにも低く、 「み、宮本信子ってこんなに魅力に欠ける下手な女優だったっけ・・・?」 と首を捻りまくった2時間半でございました。1幕で散々ぶりっ子しておきながら、2幕で“悪い魔女”の本性を現す川原亜矢子嬢の方が、よっぽどメリハリつけて頑張ってお芝居してたような気が致しますわ。 劇評系サイトでは賛否両論あった川原亜矢子嬢。個人的には、初舞台にしては充分健闘していたかと。長い手足を持て余していたような挙動はともかく、良く通る美しい声と照れの無い大きな演技は、むしろ舞台向き。また、初舞台でこういうベタな悪役をきちんと引き受けてしっかり演じちゃう辺り、事務所のマネジメントも含めて好感度大でございます。も少し絞ってくれるような演出家に付いたら、恵まれた天賦の姿態があるだけに、翻訳劇で活躍できそうな感じですわ。 で、お目当てのササクラ。 「とりあえず、佐々木蔵乃介が出てるから・・・」 という理由ひとつでうっかり面白くもなさそうな芝居のチケット取ってしまった身としては、1幕のササクラオンステージだけが心の安らぎでございました。 「凄い筋力じゃ〜」 と舞台を4歩半で駆け抜ける柄の大きさ、身体は若いのに中身は偏屈爺というギャップの芝居、とにかく1幕目は佐々木蔵乃介ショーといった趣きで。っていうか、このササクラショーが無かったら絶対暴れてたぞ、ワタシ(笑)。 いやもうホント、この芝居唯一の収穫は、うちのダンナに“佐々木蔵乃介”の名前を覚えさせた事位と言っていいんじゃないか、と<言い過ぎ?<いえいえ。 あーあ、まだ何本か、「どうして取っちゃったんだろうこのチケット・・・」ってのが控えてるんだよなぁ5月〜6月。不安なのも不安だが、チケット代金のことを思うと胸が痛いわ。しくしく。負け1。
(PARCO劇場 2002.5.19)
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