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天保十二年のシェイクスピア


そもそも、大枚はたいてあんなカスみたいな劇場を作ったT○Sの意図がさっぱり判らない訳で。更に、そんなカスみたいな劇場をやたらと使っているいのうえひ○のりの意図もさっぱり判らない訳で。きっと、こっちには慮る事も出来ないような“オトナの事情”ってヤツがあるんだろうなぁ・・・とは思いつつも、前列どころか2列前の客の頭で舞台の下半分が全く見えなくなってしまうという傾斜の甘さに激怒するあまり、肝心の芝居についての印象がすっかり薄くなってしまった私でございます。何とかしろよ赤坂ACTシアター。新感線もこんな劇場ばっかり使ってんじゃないッ!!

劇協10周年記念として企画されたお祭り芝居。脚本はこまつ座井上ひさしの旧年の大作、一旦オファーを受けたサードステージの鴻上尚史が、
「ここまでコテコテの時代物となると、こりゃあどっちにしても新感線にヘルプを頼まなきゃならんだろう。それならいっそ、最初からどすんと渡しちゃえ」
とばかりに劇団☆新感線のいのうえひでのりに演出をバトンタッチしたというシロモノでございます。出演陣がこれまた凄い。主演の三世次に演劇集団キャラメルボックスの大スター上川隆也、新感線の大黒柱古田新太に大人計画のアイドル阿部サダヲ、元第三舞台の小芝居帝王池田成志につか作品でお馴染み山本亨、マー姉ちゃん熊谷真美にハスキーヴォイスのセクシー西牟田恵に小劇団界随一の姐御女優村木よし子、文学座の重鎮小林勝也に青年座代表森塚敏と、まぁよくぞここまで揃えたモノだ・・・といっそげんなりするような布陣でございまして。私ゃ知りませんが、きっとアレでしょう、昔の正月の、“東映スター大集合のお正月映画”みたいなもんじゃないか、と。おかげで、チケット取るのがどれだけ大変だったことか・・・。

これだけの役者が揃った芝居となると、一人一人に充てて書きたいことが多過ぎて、芝居そのものの感想が出てこなくなるという・・・。
しばらく書いてみて、とてもじゃないけれどちょっとやそっとじゃ終わらないことに気がついたんで、役者毎のコメントはいずれまた別個に。

ストーリー。
天保12年の清滝宿場を舞台に繰り広げられる、対立と怨念の一幕。中央に座るは佐渡の三世次(上川隆也)、対立する二つの一家(村木よし子:西牟田恵)を転がして濡れ手に粟の一挙両得を狙うも、清滝の過去見未来見の老婆(熊谷真美)が告げるがごとく、「ふたりでひとり、ひとりでふたり」の双子の美女(沢口靖子)に惚れたが災い、悲惨な末期を迎えるまでの物語。
この本筋の中に、沙翁ことシェイクスピアの全作品をごっちゃりしっかり練り込んだ、そりゃもう濃厚な味わいの一品でございます。
本来4〜5時間はかかると言うこの芝居を、何とかざくざく切り取って、それでも休憩除いて3時間半のすさまじさ。歌舞音曲はど派手だし、話はつくづく込み入ってるし、おまけに役者陣が2役3役の早変わりですので、板の上はもちろんのこと、観てるこっちも非常に集中力と体力気力を必要とする芝居でございました。しかし、適度にニナガワ入った舞台装置といい、4時間弾きっぱなし(多分、どの役者よりもバンドメンバーが大変だったに違いない)の音曲部隊といい、とりあえず“10周年記念”にふさわしいニギニギしさではございましたな。
青年座関係のお客様などにおかれましては目を白黒のシーンも御座いましたでしょうが(高橋礼恵チャンの女郎は凄かった!)、独特の猥雑さや騒々しさ、その果てに立ち現れる人間の業の凄まじさ空しさは、かなり判りやすく提示されていた演出のように思われます。や、もちろんいつもながら、深さよりは軽さ・哲学よりは娯楽が前面に打ち出されるいのうえ演出なだけに、映像に喩えれば実に“テレビ”っぽい感じの仕上がりだったんですが(ほら、あるでしょ、同じ原作の筈なんだけど、映画化とテレビ化ではどことなく肌触りが違うってケース)。

ことごと新感線芝居と言うのはそういう傾向があって、以前よりファンの悪評が高かったんですが。とにかく、公演後半になればなるほど練れる芝居・・・つまりは、初日辺りに観に行った客はいわばリハーサル見せられて金取られてるようなモンでして。私が観に行ったのは、中日と楽前々日の2回だったんですが、それでも明らかに出来が違うんですから困ったもんです。今回は、東京→大阪という公演順でしたので、東京チームは
「(きっと更に練れるに違いない)大阪が羨ましいぜ」
と嘆くこと嘆くこと。つまり、逆を返せば、まだまだ伸びる(というか、時間的にはすっきりと縮む)可能性がありそうな芝居だったってことでしょうかね。一度でいいから、すかっと初日から完成品見せてくれよー・・・。

ま、もう、何はともあれお祭り騒ぎっちうことで。乱痴気騒ぎには絶妙の脚本と豪華なキャスト、それに“学園祭的大人気皆無の莫迦騒ぎ”は滅法得意ないのうえひでのりの演出に乗って、ひたすらグルーヴしてれば良かっただけの4時間。いちいち評するのも無粋な感すらいたします。チケット代の高さも、学生芝居にカンパしたようなモンだと思えば腹も立ちません。もう、筋はともかく国定忠治とサダヲが面白かったからいいや、どうでも<ちょっと投げやり。
(赤坂ACTシアター・3月)



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